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【FORUM PRESSレポーター】「第86回かすがい芸術劇場 古今亭文菊独演会」


FORUM PRESSレポーターによる「わたしレポート」。
2017年2月19日(日)に開催された『古今亭文菊独演会』のレポートです。

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@文化フォーラム春日井・視聴覚ホール(撮影:かすがい市民文化財団)

Report198「江戸を聞く」 宮川あけみ

『第86回かすがい芸術劇場』の高座に登場したのは、落語界期待の大器といわれる古今亭文菊師匠。真打昇進の際には、先輩たちを28人抜きする大躍進を見せたという実力派です。
温和な笑みを浮かべ、淡い色目の着物の装いで登場した師匠に、優しい印象を受けました。
今回の演目は、『宿屋の富』と『子別れ』の2つ。どちらも江戸の庶民の暮らしぶりがよくわかる噺です。話すリズムの心地よさもあって、自分がその場にいるかのような臨場感がありました。特に「子別れ」での、酒飲み亭主と別れ、独りで息子を育てるおかみさんの心情を仕草で表すところなど、本当の女性のよう。首をかしげ、腰を斜めにして泣く、恥ずかしがる様はこちらもドキッとしたほどです。どちらかというと大柄に見える文菊師匠が、女性になる違和感はまったくありませんでした。
江戸情緒薫る一席を、寄席のように近いところで聴くことができて、耳福といいたい気持ちです。

Report199「古典落語の王道」 ますだけいこ

圓菊師匠の落語を聞き、情景がありありと目前に浮かんだことが、文菊師匠が落語家を志すきっかけになったそうです。さて、その文菊師匠の独演会、圓菊師匠譲りの語りのなめらかさで、見たこともない江戸の暮らしが、私の頭の中に浮かびました。
演目は二席。『宿屋の富』と『子別れ』。
宿屋の主人と、見栄っ張りでほら吹きの客との会話、富くじの抽選会場の喧噪、当たりくじを確認しての動揺。『宿屋の富』では、その見事な語りに、目の前にいるのが、文菊師匠1人なのが信じられないほどでした。
『子別れ』も圧巻でした。37歳の文菊師匠が、大工の熊五郎、おかみさん、亀坊を演じ分け、亀坊の時には、5~6歳の子どもそのものに見えました。そして、この噺の落ちは、何と「カスガイ」です。夫婦をつなぐ子の「鎹」を「春日井」で語ってくださったのです。何て小粋な選択でしょう。
春日井での高座は、初めてのご様子でしたが、これをきっかけに、たびたび来てくださるとうれしいです。お待ちしています。