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【FORUM PRESSレポーター】 こまつ座『國語元年』


FORUM PRESSレポーターによる「わたしレポート」。
2015年10月3日(土)に行われた『國語元年』のレポートです。
FORUM PRESSvol.72にもレポートを掲載しています。Report127はコチラからご覧いただけます。(PDF:5.13MB)

Report128 「近代日本と言葉」 ますだ けいこ

明治初期-日本中で方言が豊かに使われていた頃。「全国統一話し言葉」の制定を命じられた文部省官吏・南郷清之輔と、彼を支える出身もさまざまな南郷家の人々の大騒動をユーモアたっぷりに演じた、劇団こまつ座の『國語元年』を観ました。
日常的に共通語に接している現代の私たちは、共通語と方言を無意識に使い分け、その方言もずいぶん薄いものになっていると思います。ですが、この当時、方言は濃密です。そんな日本の縮図のような南郷家では、よくお互いを理解できるものだと思うほど、方言が飛び交い、わからない台詞がけっこうありました。そんな中、「統一話し言葉」を作ろうとする清之助の苦労は、滑稽でありながらも、それを命じたものへの辛辣な皮肉が表現されていたように思います。
いっぱい笑わせてもらったのですが、登場人物のほとんどが不幸に終わる結末に何とも言えない救われなさを感じました。同時に、これこそ井上ひさしさんの反骨精神の表れだとも思いました。

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Report129 「みんな違ってもみんな同じ」 大橋正枝

始まってから気づきました。「あ、これは喜劇なのだ」と。そして唱歌にのって踊る姿はまるでミュージカルのようでもあります。文部省官史、南郷清之輔のお屋敷では、あちらこちらのお国訛りが飛び交っています。その中で、文明開花と称して全国統一話し言葉を制定するため、八嶋智人が演じる主人公、南郷清之輔と、その屋敷のものが孤軍奮闘する話でした。私はお国訛りを理解するのに頭をフル回転させなくてはなりませんでしたが、反対に軽快な訛りがリズムを感じさせます。『國語元年』は1985年にNHKのドラマとして放映され人気を博しました。聞き取れないお国訛りに字幕まで出ていたそうです。テレビの前で、聞いたことのある訛りに目を細め、笑っている姿を思い起こさせます。南郷家では家族写真を撮ろうとするたびに騒動が起き、ピンボケになってしまいます。それでも繰り返し写真を撮ろうとする姿に、話し言葉は違っても、家族で共有した時間を写真に残したい、という気持ちはみんな同じなのだと感じました。