インタビュー

サイレント映画ピアニスト 柳下美恵インタビュー
「バスター・キートンの魅力、教えてください!」

2021/01/05
テキスト=奥村加奈子、写真=素材提供:喜劇映画研究会

「すごい!」という印象が、そのまま芸名になった!
バスター・キートン

―世界三大喜劇王と言えば、チャーリー・チャップリン、ハロルド・ロイド、そしてバスター・キートンです。3人の中で柳下さんは、キートンにどんな印象をお持ちですか?
3人とも、役者だけでなく、会社を作って作品を製作したりマルチな才能の持ち主でした。
その中でも、残念ながら一番商才がなかったのがキートン。人気はありましたが、ビジネスが上手くいかなかった。そういうことも含めて、喜劇王3人の中では、一番、愛おしい感じの人です。シャイな性格とか、純粋なところが可愛くて。

キートン_w500

―母性本能をくすぐる感じ?
そうなんです!キートンって、小さな頃から鍛えていたこともあって、身体能力が高いんだけど、その分、人とのコミュニケーションが苦手だった。そのギャップが可愛いでしょ?

―キートンは、運動神経が抜群なイメージがあります。
キートンは、舞台芸人の両親の元に生まれ、幼い頃から両親と「キートン3人組」として、各地を巡業して活躍していました。幼い頃、舞台で逆さ向きに振り回されても泣かないキートンを観て、「脱出王」の異名を持つ奇術師(きじゅつし)ハリー・フーディーニが「バスター!(すごい!)」と言ったことが、そのまま芸名になったと言われているんですよ。

 

―『文化生活一週間』という作品の中では、キートンが、はしごを登ったり降りたりするシーンがあります。「大丈夫かな?」と、観ている方もドキドキしますね。
キートンは何でもない顔をして、すごいことをするでしょ(笑)。それが彼の個性でもある。『文化生活一週間』も、普通に見ていると、当たり前のような気がするんだけど、専門家が観ると「すごい身体能力だ!」って、驚くほどなんです。

文化生活一週間_w500

―春日井の『ピアノdeシネマ』では、『文化生活一週間』の他に、『探偵学入門』も上映します。柳下さんの思う『探偵学入門』の魅力は?
映画館の話なので、当時の映画館の様子が分かって勉強になります。楽士(サイレント映画に伴奏をつける人)がいて、映画館と言っても、今とはまるで別世界。当時は、フィルム上映なので、映写機も出てくるし、映写窓も出てくる。大学の講義でサイレント映画を説明するときに、『探偵学入門』を使ったりするんですよ。

 

会場で、みんなと楽しむ―。
サイレント映画が生まれた時と同じ体験を。

―映画誕生の日とも言われる1895年12月28日。リュミエール兄弟によりパリのカフェで『キネマトグラフ』の公開が行われた年に、バスター・キートンが誕生しています。
サイレント映画がこれから盛り上がっていくぞ、という時にキートンが生まれた。まるで映画の申し子みたいでしょ?サイレント映画の時代は、音楽の生伴奏が付いていて、映画を観ることは観客にとってライブだったんです。だから、みんなが笑うと、会場全体が盛り上がる。映画館に行って、みんなで映画を観ることが最先端の大衆娯楽だったんです。

―『ピアノdeシネマ』でサイレント映画をピアノの生伴奏付きで鑑賞することは、当時の醍醐味を味わえるとも言えますね。
以前、親子で楽しむサイレント映画コメディの上映会で伴奏しました。サイレント映画は、画と画の間に中間字幕が出て、画を観て、字幕を読んで楽しむのですが、幼児は字が読めないのに大人よりも早く笑って、子どもたちの笑い声が音楽になって、大人も笑う。それで会場がすごく盛り上がりました。

―まさに、ライブですね!
会場の笑い声を聞いてると、私も楽しくなるんです。笑いが伝播して、どんどん開放される感じ?会場の笑い声に任せて、伴奏を止めることがあるんですよ。

文化生活一週間1_w500

サイレント映画ピアニストとして25年。
コロナ禍を経て―。

―コロナ禍で、仕事に影響はありましたか?
3月頃から仕事が無くなりました。7月からは、いつもの年よりも忙しくなりましたね。私がサイレント映画の伴奏を始めて、昨年で25年になりました。そこで、仕事がない期間に、仕事の仕方について自分自身と向き合う時間を持ちました。

―何か変わったことは?
ひとつひとつの作品に、丁寧に向き合っていきたいと思うようになりました。同じ作品を何度も見ていると、慣れてしまう部分があったので、今一度、しっかり作品と向き合う時間を作るようにしたんです。すると、逆に新しい発見があったり、理解が深まって、とても良い時間になりました。

―どんなに長い作品でも即興で演奏するって、本当にすごいと思います。
何回も同じ作品の伴奏をしていると、ストーリーの先を弾いちゃたりすることがあるんです。でも、サイレント映画ピアニストは、ストーリーより前に出てはいけないし、後ろに下がりすぎてもいけないと私は思っています。伴走者のように、一緒に走ることを心がけています。

―最後に、春日井の上映会へ来てくださるお客様にメッセージをお願いします。
キートンのキュートな魅力をたっぷり堪能してほしいです。あとは、難しいことは考えず、映像と音楽に身を委ねていただければと思います。

プロフィール
サイレント映画ピアニスト
柳下 美恵  Yanashita Mie
愛知県生まれ。武蔵野音楽大学有鍵楽器専修(ピアノ)卒業。1995年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で開催された映画生誕百年祭「光の生誕 リュミエール!」(朝日新聞社主催)でデビュー。以来、愛知県美術館、名古屋市美術館、中津川映画祭、東京国際映画祭、京都国際映画祭などの日本国内、イギリスのバービカン・センター、イタリアのボローニャ復元映画祭などの海外で伴奏多数。音楽で見せる欧米式の伴奏者は日本初。喜劇映画研究会との仕事も多く、様々な喜劇映画を伴奏、紹介している。

    公演情報

ピアノdeシネマ

日時:

2021/1/30(土)14:00~
※延期になりました。

会場:

文化フォーラム春日井・ギャラリー

入場料:

公益財団法人かすがい市民文化財団
TEL:0568-85-6868

発売日:

2020年12月12日(土)~
イベント情報はコチラ


出演:

柳下美恵 Yanashita Mie

協賛:

喜劇映画研究会

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