インタビュー

浪曲師・玉川太福インタビュー
教えて太福さん!太福さんが、浪曲師になったワケ。

2021/03/11
取材・テキスト=奥村加奈子

明治から昭和の時代、浪曲は“娯楽の王様”と呼ばれていました。しかし、テレビの台頭をはじめ娯楽の多様化が進むと、浪曲の人気は下火に…。そんな浪曲界に現れたキーマンが玉川太福さんです。太福さんは、なぜ若手の入門者が絶えて久しい浪曲界に飛び込んだのか?
理由を尋ねると、太福さんが爆笑浪曲師と呼ばれる所以が見えてきます。

放送作家、コント、演劇…
寄り道をしてたどり着いたのは浪曲の世界

―浪曲師になろうと思ったきっかけは?
もともと、子どもの頃からお笑い番組が大好きでした。コント番組の裏方になりたいと漠然と思い描いていたんです。それで、大学を出て、放送作家の事務所に入りました。

―夢を叶えたわけですね!
でもコントを書くというより、テレビの面白い企画を考えることが求められるばかり…僕のやりたい事ではなかった。そこで、高校の同級生を誘って2人でコントをやるようになって。

―裏方から、表舞台に転向を?
はい。そんな時、演劇を観る機会があって、演劇の中の笑いに衝撃を受けました。特に影響を受けたのは、「静かな演劇」と呼ばれる現代口語演劇。舞台上の役者は、他愛もないことを、静かにペラペラ喋っている。でも、その延長線上には物語があって、作家性もある。こんな面白い世界があるのか!と、目から鱗でした。そのまま、現代口語演劇の方向に傾倒していきます。でも、26歳くらいになると、自分の目指す方向は演劇なのか、お笑いなのか、作家なのか…見失っていきます。

―え…!?それで、太福さんはどうなっちゃうんでしょう?
そんな時、知人に誘われて落語や浪曲を聴きに行くようになり、演芸の魅力に目覚めます。

―太福さんが、浪曲を初めて聴いた時のことを教えてください。
すべてが衝撃でした。うちの師匠・玉川福太郎の声の迫力、豪快で明朗な節回しを浴びると、浪曲という話芸の凄さは、すぐに分かりました。ただ、初回は笑ったり、楽しんだりっていうところまではいけなくて…。

―第一印象はイマイチだった?
はい、浪曲自体のカルチャーショックがデカすぎて(笑)。2回目からもう虜でした。

―具体的に、浪曲の何が面白かったのでしょう?
第一に、声の迫力です。音は振動なので、体とか頭の芯に響いてくる。凄い人の声っていうのは、全身に浴びた時に高揚感と、官能的な心地よささえ感じます。他にも、顔の表情の豊かさとか、愛嬌あるセリフ回し、色んな要素に惹かれました。

太福2

 

作家志望の浪曲師!?

―実際に浪曲をやってみたくなったのですか?
私は新作浪曲を作ってみたいという思いで、浪曲師の道へ入りました。浪曲という話芸に、自分がやってきた些細な日常を描いたコントをぶつけたらどうなるのか興味があったんです。客席に居ながら、どこか作家目線だったのかもしれません。

―太福さんの新作浪曲と言えば、新作浪曲集としてCD化もされている、『地べたの二人』シリーズが有名ですね。
何も起こらないし、何も展開しない。登場する2人の感情も衝突しない。ただ毎回、微妙にすれ違うというお話です。なんでもない日常の細部を、ひたすら大袈裟に唸っているんです(笑)。

―太福さんが「面白い」と思う「笑い」とは?
若い頃って自意識過剰で、本人は真面目に生きているけれど、客観的に見ると面白くて、ちょっと愛らしかったりする。そういう笑いが好きです。例えば、女性にモテないとか、人間関係で失敗したとか。自分の体験を元に、物語を広げていくことが多いですね。そういった経験は豊富にありますから(笑)。

浪曲は、身体全体で楽しむもの

―曲師・みね子師匠との掛け合いは息がピッタリ!聴いているこちらも、気持ちがいいです。
私はこの14年間、みね子師匠と、ほぼずっと一緒にやっています。私の癖を誰より分かってくださっているのがみね子師匠。三味線も、私の声も日によって調子が違います。あまりウケないと、お互い委縮してきてるなぁと感じますし、こちらがノッてると三味線もノッてくる。まさに二人三脚です。

太福みね子師匠

 

―浪曲の稽古はどのように行うのですか?
最初の頃は、昔の浪曲師のような声と節を手に入れたいという個人的な目標がありました。古い書籍を読むと、昔の浪曲師は川べりに行って、対岸に向かって大声を出して鍛えたと書いてあって。私も真似して近所の荒川の河川敷に行って、対岸に向かって、「何が何してなんとやらー」と声を出して鍛えていました。雨の日も、雪の日も。

―入門後、早くに師匠を亡くされ、ご苦労も多かったのでは?
基礎を覚える時は、師匠・福太郎のものまねから入りました。でも、うちの一門は、最終的には師匠の真似をするなっていう教えがあって。そこから先は、色んな師匠の中から、自分の好みと声質に合うものを手探りで集めていって、自分の個性を作っていくことになります。まだまだ、太福節は出来てはいないんですけどね。

―ズバリ、浪曲の楽しみ方を教えてください。
頭で考えるより、音を浴びて、まず体感していただくことです!まっさらな気持ちで、耳を傾けていただけたらと思います。

太福さんが語る、落語家・瀧川鯉八!
大尊敬する兄さんです。“新作落語しかやらない”という信念をお持ちなのが素晴らしいと思います。真打お披露目の興行の高座も凄かった。当然、新作です。しかも、ちょっと変わった世界観で、オリジナリティ強めのネタを披露していました。あ、鯉八兄さんのことを、素晴らしいって申し上げたんですけど…。実は、やめていただきたいことが…。
「ソーゾーシー」という創作話芸ユニットのツアーで、一緒に全国を回らせていただいています。本番の前後に空き時間があると、鯉八の兄さんが、うちのみね子師匠を連れ出してくれるんです。「みね子さん、ハーブ園に行きましょう」とか「ごはん食べに行きましょう」って。師匠もご年配なので、1人で出歩くよりも兄さんが付き合ってくださると心強いんですけど、結果的に2人の距離がどんどん縮まってまして…。しかも最近、鯉八兄さんが、みね子師匠のことを「お嬢」って呼んでいるんです(笑)。みね子師匠も、「お嬢」と呼ばれることにまんざらじゃない感じで(笑)。でも「お嬢」って呼び方はちょっと…。弟子としても複雑な気持ちです。
ようこそ、浪曲の世界へ!
落語が登場人物の“セリフ”で進行するのに対して、浪曲は、メロディーのある“節”と、“セリフ”と“語り”で進行します。さらに、曲師と呼ばれる三味線奏者の伴奏も加わります。浪曲の三味線に楽譜はなく、ジャズのセッションのように浪曲師と曲師が、お互いの呼吸を探りながら物語が進行していきます。太福さんは浪曲のことを「三味線伴奏付の一人ミュージカル」と言っています。
プロフィール
浪曲師

玉川 太福(たまがわ だいふく)
生年月日:1979年8月2日
出身地:新潟県新潟市
■芸歴
2007年 二代目玉川福太郎に入門
2013年 浅草木馬亭にて名披露目

    公演情報

第90回かすがい芸術劇場
瀧川鯉八・玉川太福二人会

日時:

2021年4月18日(日)14:00~

会場:

文化フォーラム春日井・視聴覚ホール

入場料:

一般¥3,000、PiPi会員2,700、小中高生¥500(学生の特券対象公演)
(税込、全指定席、未就学児入場不可)

発売日:

★PiPi会員Web&電話先行予約
2021年3月13日(土)9:00~16日(火)17:00

★一般Web会員先行予約
2021年3月17日(水)10:00~19日(金)17:00

★一般発売 2021年3月20日(土・祝)~

一般発売初日の販売時間について
●文化フォーラム春日井2階・文化情報プラザ 9:30~
●春日井市東部市民センター2階・事務室 9:30~
●かすがい市民文化財団 Web&電話 10:00~

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主催・問合せ:

公益財団法人かすがい市民文化財団
TEL:0568-85-6868