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【FORUM PRESSレポーター】木村セツ「93歳セツの新聞ちぎり絵 原画展」


「FORUM PRESSレポーター」による「わたしレポート」。
市民ボランティアが、かすがい市民文化財団のアレコレを紹介します。

今回は、2022年4月28日(木)~5月22日(日)に開催された
木村セツ「93歳セツの新聞ちぎり絵原画展」を4名がレポート!


「会期中、8,843人ものお客様にご来場いただきました」

Report445 【卵かけご飯に魅了され】田本莞奈

チラシの「卵かけご飯」に一目惚れ!そして、裏面の「パック寿司」に魅了され、原画展に行くことにしました。文化フォーラム春日井に着くと、そのチラシを拡大したポスターが!それまで気付かなかった卵かけご飯の卵の白身を見つけ、本物そっくりな表現に感動しました。原画展を見る前から大興奮。ワクワクしながら会場に入ると、ハガキサイズのちぎり絵作品がずらりと並びます。A4サイズくらいの作品を想像していたので、この小ささで、こんなにも細かく作れるのかと、びっくりしました。涼しげで美しい「風鈴」、忠実に再現されている「ポテトチップス」など、どの作品も素敵でした。でも、やはり一番のお気に入りは「卵かけご飯」。照明もきれいに当たり、生で見る「卵かけご飯」は最高でした!会期中に制作された最新作「柏餅」も見ることができ、とても楽しかったです。入場者数過去最高記録を更新したセツさんの原画展、また春日井に来てほしいです。

Report446 【93歳の目力が生かすもの】宮川あけみ

新聞紙って地味。ちぎり絵になる色なんてあったかなと思いながら、会場に。展示されていたのは、想像を超える豊かな色彩をもつ作品でした。127点の原画はどれも、作者・木村セツさんが日常の中で目にする野菜や花、自分の好物を題材に制作したもの。新聞紙から色を選び出してちぎり、一つ一つ貼り付けていく作業は手間がかかると思います。しかし、ご本人は「夢中で時を忘れるほど」 と。この熱心さが私達に、より本物らしさを感じさせるのかもしれません。なかでも私が色遣いに惹かれたのは、同系色でまとめられた「ブロッコリー」と「うるめいわし」。どちらも緑と青色の濃淡やちぎり方で、質感が写実的に表現されていました。特に「ブロッコリー」はセツさん自身が「ようできたと思てます」とおっしゃる作品。こんもりとした一房一房に色の違う緑色を当てはめていました。題材と新聞紙をしっかり見て、作品に生かす。鋭い観察眼に脱帽です。

Report447 【ブロッコリーは山の緑】高塚康弘

卵かけご飯は黄身が盛りあがり、蓋を開けたパック寿司はまぐろが赤く光っています。90歳になって始めたちぎり絵作品は、とれたての野菜や魚のよう。鮮やかな色と形が躍っています。自信作のブロッコリーは山の写真を使ったとのこと。育てていたひよこ、喫茶店で出していたオムレツカレーに、孫と飾ったクリスマスツリー。毎朝の食パン「超熟」に、最新作の柏餅。あちこちに、もとの新聞の活字がのぞいて、まるで絵が何かひそひそ話をしているようでも、くすくすと笑っているようでもあります。セツさんが、毎日いろいろな物に話しかけ、いろいろな物の声を聴くファンタジーの主人公のように思えてきます。会場の所々に添えられたご本人の言葉も93年の歴史を語ります。まるで、木村家の茶の間で湯吞みを手に、セツさんの作業を拝見している気分になる展覧会でした。集中すると夜中まで創作されるそう。今晩は、どんな作品が生まれているでしょうか。

Report448 【感動!新聞紙がアートに!】阪井真佐子

「人生100年」時代に入ったとはいえ、90歳を過ぎて何かを始めようとするには相当のエネルギーを要します。それを見事にやり遂げてしまったセツさん。「93歳セツの新聞ちぎり絵原画展」は、エネルギッシュでありながら、五月の緑風にも似たフレッシュでハートフルな雰囲気に満ち溢れていました。
展示された原画は、どれも精巧で写実的でありながら、思わず微笑んでしまいたくなるお洒落なユーモアがいっぱい。じっと目を凝らすと、繊細な陰影が新聞の文字で表現されていたり、「チキンラーメン」が「“キチン”ラーメン」になるなど、実際の商品名と微妙に変えていたりするのです。どの作品も生活感に溢れ、セツさんが楽しんで作っている姿が目に浮かびます。懐かしくて、愛おしくなるのは、作品にセツさんの飾らない温かな人柄が滲み出ているからでしょう。「何かを始めるのに、遅すぎることはない」と教えてくれるセツさんは、まさに“人生の師”です。