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2021年12月の記事一覧


【FORUM PRESSレポーター】本山ゆかり コインはふたつあるから鳴る


「FORUM PRESSレポーター」による「わたしレポート」。
市民ボランティアが、かすがい市民文化財団のアレコレを紹介します。

今回は、2021年4月23日(金)~5月11日(火)に開催された
本山ゆかり コインはふたつあるから鳴るをレポート!

Report431【絵画って何だろう】田本莞奈

絵を描くことに向き合い続けた本山ゆかりさんの作品展には、面白いアイディアで作られた作品がいっぱいありました。中でも、世界的な名画をモチーフにして、額も含めてロープで一筆書きのように描いた作品が気に入りました。白い壁に釘を打ち、ロープを這わせて作られます。壁と同じ色の真っ白なロープなのに、迫力があり見入ってしまいました。布を使った作品では、シワも作品の一部なのだそうです。私だったらシワは取り除いてしまうので、すごいなと思いました。さらに、本山さんは会場の雰囲気にも気を配ったそうです。銀色だったピクチャーレールは、すべて白色に。移動壁の脚は四角く囲うなど、細かなところまで工夫が凝らされていました。個々の作品だけでなく、会場の雰囲気やチラシ、パンフレットも含め、「コインはふたつあるから鳴る」の世界観を感じることができました。“絵画”や“アート”の奥深さを味わうことができて、楽しかったです。

Report432【考えた、その先に】紀瑠美

本山さんは「絵とは何だろう」と考え続け、作品に表しています。本展では3種類の作品が揃い、見応えがありました。特に、白い壁に白いロープで描いた「絵」は興味深かったです。既存の絵を線でなぞり、壁に投影して釘を打ち、釘にロープを掛けながら一筆書きするそうです。元になっている絵は、セザンヌの絵。輪郭線を描かず、光を描くことで表現しようとしたセザンヌの絵を選んだところに奥深さを感じました。本作では「絵は変化せず、持ち運べることが重要」とされてきたことについても考えたとのこと。本山さんの作品は持ち運べませんが、額縁ごと描くことで「絵」であると認識させていて面白かったです。会場で配られたパンフレットも、展覧会を楽しむヒントとなりました。来場者との会話を大切にする本山さんの姿も印象的で、質問に答えたり、説明したりしながら、さらに思考を深めているようでした。今後も春日井で現代アート展を見られたら嬉しいです。


【FORUM PRESSレポーター】シネマ歌舞伎「女殺油地獄」


「FORUM PRESSレポーター」による「わたしレポート」。
市民ボランティアが、かすがい市民文化財団のアレコレを紹介します。

今回は、2021年8月26日(木)に開催された
シネマ歌舞伎「女殺油地獄」をレポート!

Report429 【なぜ闇に光が灯らなかったのか?】川島寿美枝

コロナの影響で、松竹大歌舞伎が2年連続中止になりましたが、今年は映画で歌舞伎を楽しむ事ができました。近松門左衛門の人形浄瑠璃が、歌舞伎として脚色された『女殺油地獄』です。
油問屋「河内屋」の跡取り息子与兵衛は、母親が番頭徳兵衛と再婚した事からすさんだ生活に落ちていきます。舞台と違い、映画は顔の表情が大きく映し出され、与兵衛を演じる松本幸四郎のやんちゃな仕種に憎めない愛しさを感じさせます。そんな彼を、市川猿之助が演じる同業「豊嶋屋」の女房、お吉が口喧しくも優しく見守ります。
追いつめられた与兵衛がお吉を殺めようとするラストシーン。不気味に油が漏れる音。身を守ろうと全ての燭台の火を消すお吉。全身油まみれの二人の顔が暗闇の中、青白く凄惨に浮かび上がります。二人の熱演に合わせるように恐ろしく、悲し気な三味線の音が響き渡ります。
与兵衛の心の闇は現代にも通じるものがあり、見終わった後は腕が粟立ちました。

Report430【初めてのシネマ歌舞伎】前田高秀

DVD、テレビ等で映像化された舞台はいくつか観てきましたが、シネマ歌舞伎はひと味違いました。
まずは音。客席の拍手、掛け声、浄瑠璃がとてもリアルでした。役者の口跡(台詞)も生の舞台よりよく分かり、油の滴たる音まで聞こえたのもシネマならではと感じました。
圧巻は幸四郎の所作と顔芸。江戸時代、油屋の放蕩息子である主人公が借金に困り両親や妹、幼馴染を困らせます。嘘をついたり、泣きおとしにかけたり、暴力を奮ったり。果ては幼馴染でもある人妻(同業者)を殺してしまいます。お気楽、甘え、不貞腐れ、強がり、恐れ等の表情。油にまみれながら人妻を殺めるクライマックスの狂気!それらの所作と顔芸が、ここでもシネマならではの絶妙なカメラワークで展開されます。幸四郎の好演もあり、思わず身体を硬くして観入ってしまいました。
シネマ歌舞伎に触れてから観る舞台公演には、新しい魅力があるのでは―。そんな期待を抱かせてくれました。